MoMA: "The Great Migration series"ほか

2012年8月9日

滞在中に一度は行っておくべきだろうと思ったので、MoMAに行ってきました。

ニューヨークで入った美術館の中で一番混雑していました。ミッドタウンにあって有名で、メトロポリタンほど広くはないから人口密度が高くなるのだろうなあと。また冷房がきつく、いつも持ち歩いているカーディガンを着ても肩が痛くてたまらなくなりました。アメリカでは冷房がきつくて寒いところが多く、そういう場所では私はなぜか肩が痛くなります。そんなわけで肩が痛くだるいのを我慢しながら最上階から1つずつ降りて見ていきました。

最後に見た2階の写真を見るのが駆け足になってしまったのがやや残念でした。上階のほうの現代というよりは近代の絵画が私はやっぱり好きだと思いました。

印刷物などで見覚えはあるけど、今回じかに見てみて印象が違ったのは、アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」。ワイエスに関してそれほど知識はなく、見たことがある絵だな、なんとなく寂しそうな感じだなというくらいの認識だったけれど、近くで見ると腕が異様に細くしわがあり、髪は白髪交じりで薄くなっていて、生々しい感じでした。

以下は「クリスティーナの世界」の一部分です。



帰宅してからネットで調べて、この女性はワイエスの自宅近所に住んでいて、ポリオで足が不自由だったためいつも這って移動していたことを知りました。そういう知識なく見たので、絵から受ける印象は絶望的というか、生きるのが大変すぎるという感じだったのだけど、実際にはこの女性は毎日このように這って移動していたようです。

ジェイコブ・ローレンスという人の「The Great Migration series」(大移動シリーズ:参考)もよかった。連作だがすべてがMoMAにあるわけではなく、とびとびの状態です。20世紀初頭、アメリカ南部の黒人たち。奴隷ではなくなってからずいぶん経つが、それでも豊かになれるわけではない。差別はあるし、仕事は少ない。そんな中、アメリカ北部には工場がたくさん建ち、人手が足りない。北部から労働力のスカウトにやってくる人がいる。南部の黒人たちは話し合う。かなりの距離だ。本当に北部に行けば豊かになり、差別も受けずに暮らせるのだろうか。そしていくらかの人は北部に行くと決心する。家財道具をまとめて、混雑した列車で北部に行く。北部では仕事もあり、子供たちを学校に行かせられるようになった。

しかし「こうして黒人たちは幸せに暮らしました。めでたしめでたし」ではなかったということを後生に生きる私たちは知っています。工場は、賃金の上がりすぎたアメリカを離れて、日本より早く途上国に移転しました。私が3年前に住んでいたニューヘイヴンの中心部にいた黒人たちは、こうして南部からやってきた黒人たちかその子孫のはずだけど、今あからさまな社会的差別は少ないにしても、経済格差は固定しているようだし、彼らの生活環境はよいとは言えないという印象でした。

それでもなお、この連作を順に見て、南部から北部に移るという大きな決断をして、「子供も学校に行けるようになったし、移ってよかった」と『そのとき』思った、というのが、しみじみとよかったなぁと思いました。といっても、リアルな感じの絵ではなく、抽象的な絵なのだけど。

そのほか気になった作品をいくつか。

Edward Ruschaという人の「Self」という作品。シンプルなのにちゃんとSelfなのがすごいなぁと(笑)。



Marcel Broodthaersという人の「Model: The pipe」ほかいろいろ。すべて1968~69年の作品です。色やフォントなどがおしゃれで綺麗。



フェルナン・レジェの「The Three Musicians」。この人の絵は、すぐそれとわかりますが鮮やかで明快でいいなぁ。



ガイドブックには高層階のカフェがお勧めと書いてあったけれど(たぶんテラス5のことだったと思う)、行ったときには行列ができていて諦めました。閉館時間ギリギリまで見ていて、次の予定もあったのでMoMAショップには行けませんでした。残念だけど、ショップは日本にもあるからまぁいいかなあと。

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yucoの個人サイトです。既婚で子ども2人。岐阜県出身で現在は東京在住。短期間ですがアメリカにも住んでいました。1998年から個人サイトを運営し、10年以上にわたってレンタルサーバにブログツールをインストールしてブログを書き、あちこちの新しいネットサービスを試したりしていました。現在はおもにTwitterとたまに長文テキストを書きたいときはNoteを使っています。


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